
適切な頭金の水準を決める3ステップ
頭金の適切な水準とはどのぐらいを指すのでしょうか?
私は、頭金を決定するのに「物件価格の何割」という表現をするのは妥当性に欠いていると思います。
その理由は、頭金の水準は物件価格だけでなく、家計の状況に応じて決定する必要があるからです。
ではどうやって決めるのか。次の3つのステップで検討するのがよいでしょう。
(1)手元に残す資金が将来のために十分な水準になっていること
手元に残すべきお金は3種類に分類されます。
「万が一のためのお金」や「1年以内に支出が決まっているお金」、「将来の支出への備え」の3つです。
「万が一のためのお金」は、サラリーマンであればおよそ生活費の6カ月分くらいが目安でしょう。
ただ、共働きで、夫婦で借り入れを検討している場合は、12カ月分くらいを目安にして下さい。
「1年以内に支出が決まっているお金」とは、生活費で賄わないような支出(車検代、入学金など)や、住宅新規購入にかかわる出費(引っ越し代、家具・家電製品、光通信の設置費用など)です。
「将来のための支出への備え」は、教育費、老後資金、介護費用、車の購入費用等ですが、その準備を月々の貯蓄だけで行うのは厳しいので、貯蓄として残しておくことが大切です。
資金計画を立てる際に、頭金をいくらにするかによって計画内容が大きく左右されるため、気にするのはわかります。
ただ、住宅購入後の生活の方がずっと長いことを考えれば、手元に残すべき資金について正確に算出することは重要です。
以上の方法で金額を計算し、またあわせて保有資産を把握することで、初めて頭金に回してもよいお金が計算できることになります。
(2)借入金が家計収支を圧迫しない水準に収まっていること
借入金が家計収支を圧迫しない水準を考える上で家計収支がプラスになっていることは大前提です。
それだけでなく、教育費、修繕費、車の購入費、介護費用など、将来に必要となる支払いに備えた準備をしつつ、貯金に回す余裕資金を作れることだと考えます。
家計によってどれくらい準備すべきかは異なりますが、一例を挙げます。
教育費用は大学費用のみ準備が必要と考え、医科・薬科はないと仮定すれば1人当たり500万~600万円前後の資金が必要となります。
18年間、毎月2万5000円を積み立てすれば540万円となり、この水準を目安にします。
ただ、子どもが下宿をする場合はこの倍近くの資金の準備が必要ですので、多めに準備してもよいと考えます。
また、児童手当が1人当たり1万5000円ありますので、これを使わずにためることを考慮してもよいでしょう。
ここから、毎月1万円の教育費を積み立てるとします。
家計における余裕資金から将来のために必要な積立額を差し引いたものを、フリーキャッシュフロー(FCF)と呼んでいますが、これが収入の最低でも5%を超えていることが、家計の安全性の最低基準ですので、指標とされてはいかがでしょうか。
(3)住宅ローン選択と併せてコストパフォーマンスをチェック
住宅ローンの商品性によっては頭金の水準がコスト削減につながることがあるので、(2)で計算した範囲内で頭金水準を決めます。
物件価格に占める頭金の割合によって、融資対象となる商品があったり、融資金利の優遇があったりします。
そのメリットの享受と、資金を準備するためのコストを比較すれば、ようやく頭金の最適水準が計算できます。
フラット35は物件価格の9割までしか融資対象としていません。
ただ、それ以上の金額をフラット35を取り次いだ金融機関が貸してくれることもあり、頭金が絶対1割必要というわけではありません。
ただし、フラット35の金利は現在、最安金利が1.8%程度なのに対し、残りの1割分も融資を受けようとすると金利が2~3%になることが多く、コストアップになることもあるので慎重な判断が必要となります。
■頭金2割以上で優遇金利も
また、頭金から諸費用を差し引いた金額が物件価格の2割以上あれば、全期間金利を0.2%優遇するというような制度を持つ金融機関があります。
もちろん、その金融機関の金利水準、金利タイプ、そしてその金利タイプが内包する金利リスクをどこまで家計が許容できるか、など総合的に判断することが必要となります。
単に金利が安くなるからだけで判断するのは、計画とはいいません。
よくあるケースは、あと200万円あれば有利な条件を受けられるのに諦めてしまっているケースです。
その200万円を調達すれば、具体的にいくらのメリットになるか、計算してみてください。
借入金額3000万円、35年という条件であれば、金利が0.2%下がることで、コストは120万円安くなります。
これが大きなメリットと感じるならば、親に頼み込んででも準備した方がよいでしょう。
一生、家に住み続ける予定であれば、頭金は必ずしも3割必要とはいえないと考えます。
(1)、(2)を検証していれば、極端にいえば頭金0円でも問題はないでしょう。
■全額ローンにはリスクも
ただし、万が一のことを考えれば、物件価格だけでなく諸費用まで含めて全額を住宅ローンで借りるのは、色々な面でリスクが高いと考えます。
現在は、それが可能な商品が存在するため、全額ローンでもいいという風潮があることに疑問を感じます。
公表されていないので何とも歯がゆいのですが、10割融資、つまり頭金0円の方の延滞率は高くなる傾向にあるので、適切な資金計画が立てられていないのではないかと思います。
従って、頭金を0円とする場合には、将来に起こる様々なリスクを踏まえ、合理的な計画をたてた上で決断をしてほしいものです。
リスクは起こった時に考えればよい、というのでは子どもの発想です。
お気軽にご相談下さい。
~私たちにちょうどいい家(R)プロジェクト Daihyo TV~
~あなたの昼が”陽の光”に満ち、
あなたの夜が”愛”に満ちたものでありますように~